INTERVIEW

遺伝子治療の技術で、難病に苦しむ人を救いたい

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社名 株式会社レストアビジョン
代表者名 代表取締役 堅田 侑作

事業概要を教えてください。

慶應義塾大学医学部と名古屋工業大学の共同研究成果を実用化すべく、治療法のない失明疾患を対象に視覚再生遺伝子治療薬の開発に取り組んでいます。

起業したきっかけや起業を決断できたポイントはなんですか?

自分で決断したというよりは、当時の慶大眼科の坪田一男教授が「これはベンチャーつくって開発しないと実用化できない」といって、気が付いたら会社ができていました(笑)。

それまで起業を考えたこともなかったのですが、もともと医学部にきたモチベーションが「研究で世界を救いたい」というもので、大学院時代に研究室主宰者の栗原俊英先生のもと立ち上げから自分が携わったプロジェクトだったので、その成果の実用化のために「起業」という手段を選択するのは合理的なので、違和感はなかったです。

起業後の苦労したエピソードやリアルな失敗談を教えてください。

もともと医師・研究者でしかなくビジネスのことは全く素人だったため、社長になって1年以上無給で、一人でひたすら営業して、提案を袖にされる日々でした。しかし、その過程で起業家としての覚悟ができたと考えています。

起業してよかったと感じたことはなんですか?

夢がリアルになりそして拡がったことですね。臨床医だと目の前の患者さんしか救えず、世界の患者さんを救えると思って研究の世界に飛び込みましたが、起業で自分がその開発に携われるようになり夢に現実感が出たと同時に、日本の産業創成や経済成長にも貢献できるというやりがいを持てるのことにもとても感謝しています。

起業後も、幸いにも所属している慶應義塾大学医学部眼科学教室の皆様の理解が得られ、兼業という形で大学病院で対象疾患の専門外来を担当させていただいております。

起業すると専門外の投資家さんなどに技術を理解してもらわないとならず、説明力が上がり、それが患者さんへの説明にも生かされていると思います。また、難病の外来は治療を提供できないのが非常につらく歯がゆいのですが、起業して治療薬の開発を始めてからはモチベーションをいただくとともに、患者さんのニーズに応えられる開発ができるよう、一層前向きな気持ちで臨むようになりました。

起業前と起業後で働き方や考え方に変化はありましたか?

現場仕事から事務仕事が多くなり、コロナもあり在宅含めフレキシブルに働いています。忙しさは変わりないですが、医師と比べて緊急や当直などがなく夜寝られるのは感謝しています(笑)。

医師として求められるのは失敗なく確実に標準的な医療を提供することですが、スタートアップの社長としては、失敗を折り込んで挑戦することを求められるので考え方は大きく変わりました。

神戸市と接点を持って得られたメリットはなんですか?

神戸のイノベーションエコシステムの仲間入りが出来たことが、まずメリットに挙げられます。イノベーション創出・推進に取り組む行政機関、研究施設および病院といった施設のほか、製薬関連の大手企業、私どものようなスタートアップが多数存在しており、これまでアカデミアに関係がとどまりがちだった会社が外の空気に触れ、さまざまな情報が入ってくるようになりました。

また、神戸市や神戸医療産業都市推進機構のみなさんが非常に気にかけてくださり、弊社の活動を広く発信いただけることで、社会的な一定のプレゼンス向上や信用供与につながっていると実感しています。特に我々の眼科・再生医療という分野でいうと、最新の医療はそれを受け入れるルール作りも同時に必要で、そのためには産学官と当事者(患者)の連携が不可欠ですが、それがすでに完成しているのが神戸医療産業都市であり神戸アイセンターです。薬を生み出すだけでなく、適切に情報も含めて患者さんに届けられるまでが大切だと考えているので、その土壌づくりに神戸市の皆さんのお力をお借りできれば嬉しいです。

なぜ神戸を選んだのですか?

神戸医療産業都市の存在はほかの地域と比べて圧倒的に異なる点だと考えています。すでに複数の医療・創薬関連施設とそこで活動される各プレイヤーが存在するコミュニティが存在し、その一員となることに魅力を感じました。

また東京都内からの移動が便利である点もポイントのひとつだと考えています。

スタートアップを始めてみての感想や、働き方・生き方・考え方・人との関り方の変化等あれば教えてください。

始めるときに、ある先輩から「バイオは米国でやった方がいい。創薬環境のないハードモードの日本を敢えて選ぶ理由はない。」と言われました。我々のプロジェクトがそれでも敢えて日本で行うのが最善と考えて進めているのですが、開発環境については実際始めてみて想像以上で、必要なヒトモノカネが東京にすら無く、スーパーハードでした(笑)

ですが、そんな黎明期だからこそ、モチベーションの高い優秀な方々がその基盤を作るべくこの神戸を中心に集まっていらっしゃり、強い団結力が形作られていると思います。

“まち”として神戸の好きなところは?

私は元々関西の出身なので、地元という意味でも帰ってきた気持ちになり大好きですが、神戸は特に山もあれば海もあり、自然も都会もオシャレも科学も全部欲張れるのが一番の魅力かなと思います!

これからスタートアップをする人に向けて、一言お願いします!

特に創薬スタートアップは、人々を救うだけでなく、外貨を稼いで国を豊かにし、経済まで救える非常にやりがいのある仕事だと思っています。ぜひ一緒に挑戦しましょう!また今後、神戸市がそんな人たちが失敗のリスクを恐れずチャレンジできる場になると信じています!

▼インタビュー動画はこちらからご覧いただけます。▼

https://youtu.be/YIn2pAZVMRI