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【オープンイノベーション】革新のこたえを創造する。川崎重工グループが取り組む 未来への3つの挑戦

<インタビューイー略歴>
川崎重工業株式会社
企画本部 イノベーション部 部長                
大館 秀明氏
 
<経歴> 
1992年中央大学卒業、同年川崎重工業入社。FA・ロボット、大型構造物、再エネ、鉄道関連、大型二次電池、MC&Eなど、多様な新事業、新製品の立ち上げをコアメンバーとして実施。2020年5月より現職イノベーション部に従事。

『世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する”Global Kawasaki”』

1896年10月の株式会社川崎造船所設立以降、日本と世界を繋ぐ役割を担い、様々な荒波もグループ一体となり、乗り越えてきた川崎重工。長い歴史の中で、外部環境の急激な変化に何度もさらされながらも、多岐に渡る顧客ニーズに応え続けるため、テクノロジーの頂点を目指し、独自性と革新性を追求し続けてきました。その川崎重工が、これから先の「つぎの社会に」向けて、世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献していくために、「グループビジョン2030」を打ち立て、3つのフィールドを設定し、大きな挑戦を開始しました。自組織の枠・製品の枠にとらわれず、自らの可能性を拡げるべく、オープンイノベーションにも積極的に取り組んでいる川崎重工が「ひょうご神戸スタートアップ・エコシステムコンソーシアム」への参画を決めた理由と、スタートアップと連携することの期待について伺いました。

※ひょうご神戸スタートアップ・エコシステムコンソーシアム;兵庫県、神戸市、神戸商工会議所が、賛同いただいた企業・団体等とともに、世界で活躍するスタートアップ企業の輩出をめざし、世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点都市の形成による、スタートアップ支援の一層の推進を目的として設立された団体

 


オープンイノベーションがもたらす、新たな価値の創造へ

-まずはコンソーシアムへの参画を決めた理由を教えてください

大館氏(以下、大館):川崎重工業株式会社は神戸市が地元ということもあり、我々が積極的に参画することで、兵庫県神戸市という地域から「イノベーションを興す」ための一助になれば、という想いがありました。それに加えて、当社では、オープンイノベーションを積極的に進めていくことは非常に重要なことだと考えております。様々なスタートアップと連携することにより、従来ではやってこなかったビジネスが生まれ、その延長線上にある「新たな価値」を一緒に共創して、世の中に提供していくことを期待して参画しました。

「新たな価値を生み出す」という文脈では、社内でも積極的に行われているようですが、なぜ外部との連携にも目を向けるのでしょうか

大館:仰られたように「ビジネスアイデアチャレンジ」という社内ベンチャーを育てる制度も始めておりますが、「新たな価値をつくる、価値を向上させる」という部分においては、革新的な技術・サービスを持ったスタートアップと連携していくことも、社内のアイデアに投資することも基本的に同じであるという考えを持っています。現在当社ではグループビジョン2030というものを制定し、2030年のあるべき将来像に向けて中長期でどのような経営を行い、成長していくのかを示しております。大きな特徴として、従来までそれぞれのビジネスユニットがそれぞれの分野で中長期戦略を描いていたところを、グループ全体でシナジー生み出しより大きな価値提供が行えるような体制を目指しています。グループビジョンでは当社が今後注力していくフィールドを明確にしており「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」の3つに定めました。大きなフィールドに設定したことにより、取り扱うべき社会課題も拡がり、ビジネスユニット単独での解決を目指すのではなく、様々な事業が一緒になって取り組んでいく必要がある。さらには社内にあるリソースや知見だけで対応していくのではなく、積極的に先進的な技術トレンドを吸収し、その際に革新的な技術・サービスを持つスタートアップへ、投資もしくはアライアンスを行っていくべきだと考えています。


お互いに手を取り合い、新たな領域へ一歩踏み出していきたい

-連携進めていかなければならない状況にはなりましたが、そう簡単に進むものでしょうか

大館:ビジネスユニット単独でも、「カワる、サキへ。」を合言葉に、大きく成長方針を見直しています。一方、ビジネスユニットでの解決が困難な中長期的な課題、単独では取り上げづらい新たな領域や価値創造を行う際、その効果が限定的になってしまう可能性があります。そんな状態のときに、より広い視点で全社を横断的に見ることができる本社部門の必要性が出てくるため、我々がその機能を担っています。私は現在2代目の部門長となりますが、この部門が創設された当時「オープンイノベーション」という言葉が流行りはじめたタイミングでもあり、各ビジネスユニットがすでに独自でのイノベーション活動に取り組んでいました。そのような状況ですので、創設された当初は、我々本社部門と事業部門との業務内容の棲み分けが難しく「こっちの領域にわざわざ入ってくるのか、どこからどこまでが本社部門でやるのか」と、小さいながらもコンフリクトがあったと聞いています。ただ、いざ一緒に活動してみると事業部門は基本的に短期での事業計画に責任があるため、スタートアップと連携に踏み出そうにもまだ世の中に浸透していないよく分からない技術・サービスには投資がしづらい。そこで我々が間に入り、PoC実証のための費用を捻出し、背中を押す役割や機能を認識してくれるようになりました。

資金援助を行うということは、PoC実証のゴール設定も本社部門が行うのでしょうか

大館:PoC実証を行うにあたり、ある程度のKPIは我々自身で設定します。ただ、我々が注視していることは、マーケットインの発想で解決したい課題が明確になっているか、ビジネスインパクトや波及効果がどれぐらい期待できそうなのか、詳細な事業計画までは要りませんが、その可能性や思いの強さを重要視しています。したがって、我々は、「各ビジネスユニットからの課題や”グループビジョン2030”から見えてくる新たな価値を創造するネタを集めること」そして「それを解決できる可能性のあるスタートアップとをつなげること」の2点だと考えております。これまで、とてもありがたいことに神戸市役所を含む連携先からのご紹介や、各種アクセラレーションプログラムに参加することでスタートアップとの接点を作ってきましたが、やはり「川崎重工と連携をしたい人はこの指とまれ」と発信して、応募していただけるところは熱量が高いです。今後は我々からリバースピッチ等を行い積極的に共創の場を作っていきたいと考えています。

‐これから更なる価値提供に向けて、スタートアップにかける期待と想いを教えてください

大館:我々はスタートアップとの連携において、3つの観点を大事にしており、「我々がその製品のユーザーになり得るのか」「既存事業・製品との連携によって、新たな価値を創出できるか」「資本提携を絡めた新たな領域へ踏み出せるかどうか」これらをゴールとしております。一方でこれらは観点として持ちつつも、領域を絞るということはしておりません。これまでの経験から、駄目になったことを考えるのではなく、まずはつながったら面白いそうだを考えることにしています。互いが悩みつつもワクワクしながらコラボレーションすることが、当初は想定していなかった領域へ一歩踏み出すきっかけになると信じています。