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【起業家インタビュー】エキスパート人材のリソースを活用し、医療系プロダクトの卵を人々の元へ

<インタビューイー略歴>
福永 将氏
株式会社xCARE 代表取締役CEO
大日本住友製薬にてMRを経験後、医療業界 (ライフサイエンス) に特化したヘッドハンティング会社、株式会社エリメントHRCでのコンサルタント業務を経て、ディビジョンマネージャーとして医療機器事業の推進に貢献。
UK本社のライフサイエンスに特化したコンサルティングファームにてエグゼクティブサーチ等様々なプロジェクトに携わり年間500名以上の医療ビジネス人材と会う。
医療ビジネスの創薬から薬事申請、ローンチの上流から下流までの知見を有し様々な医療ビジネス人材や製薬/医療機器企業とリレーションを有す。
その後、医療ビジネスの課題解決、イノベーションの促進を目的として株式会社xCAREを設立。

社会的意義のある医療系プロダクトの卵を人々の元へ。日本には良い医薬品や医療機器のシーズが数多くありますが、実際に患者さんの元に届くものはごく僅かです。医療業界に特化したエキスパートプラットフォームを構築し、エキスパート人材のリソースを活用し医療系プロダクトの卵を表に出すことをミッションに掲げる株式会社xCARE。同社のプラットフォームは2022年10月のリリース以降、150名以上のエキスパートが所属するプラットフォームへと進化しました。神戸医療産業都市に神戸支社を開設し、ビジネスを拡大させる同社代表である福永氏に、起業に至った経緯や、神戸医療産業都市へ進出した理由等をお伺いしました。


安定志向から”価値を出せる人間”へ

-製薬企業や事業会社でのご経験後、起業に至るまでの経緯を教えてください

福永氏(以下、福永):
もともと文系出身で営業職を希望しており、せっかくモノを売るのであれば社会貢献性の高いモノを売りたいという気持ちがありました。加えて、“安定・安心”という観点もあり、大学卒業後はMRとして製薬企業に就職しました。MRとして仕事をしていくなかで、これからの時代は、どこの企業にいても安定・安心ということはなく、“価値を出せる人間”が必要とされているとわかりました。価値を出せる人間とは、既存のものを経験した上で新しいものを作り上げられる人のことで、自分もそのような人間になりたいと思い、起業を意識し転職しました。

-起業を意識して転職されたとのことですが、なぜヘッドハンティング会社だったのでしょうか

福永:せっかく医薬品の業界に入ったので、医療の世界で新しいことをしたいと思いましたが、製薬企業のMRだと、営業の世界しかわかりませんでした。医療業界の課題はたくさんあると漠然と想像はしていましたが、業界全体を見ないと、具体的な課題の把握はできないと考え、医療業界に特化したヘッドハンターの仕事に転職しました。ヘッドハンターの仕事は、色々な会社の多様なクラスの人と話ができ、悩みや課題を聞くことができるため、医療業界全体を見ることができました。ヘッドハンティングの仕事を通して、製薬企業がどのように成り立っているのか、各部門が具体的にどのような仕事をしているのか、ということがわかり視野が広がりました。

-知識や経験がなければ事業運営はできないのでしょうか

福永:知識や業界への理解は非常に大切ですが、経験は必須ではないと思います。違う業界で経験を積んだからこそできることもたくさんあると思います。経験が無くても、工夫次第で事業運営はできるのではないかと思います。

-具体的に”工夫”とはどのようなことでしょうか

福永:私自身、医薬品の営業と人材紹介の仕事の経験はあったので、業界自体の経験はあったのですが、医薬品・医療機器の事業化支援の経験は正直全くありませんでした。そこで、人材プラットフォームを創る等の“自分ができること”は自身の専門性を活かし、“自分のわからないところ”は理解の深い人にメンバーに加わってもらうことで対処しました。自分のできることは最大限やる、わからないことへは理解を深める姿勢を持つということが前提ですが、どの事業も1人で全部できるということはないですよね。

-経験豊かな人をどのようにしてメンバーに加えることができたのでしょうか

福永:業界全体を理解し、課題に対しての解決法を自分なりに考え、共感してもらえた点が大きかったと思います。共同創業者の棚瀬も、課題に関して自身の考えをぶつけたところ、共感が得られ「一緒にやろう」となりました。業界について理解する姿勢と、課題に対して自分なりの考えをもつことができたら、あとはそれをぶつけて少しずつブラッシュアップしていく過程で少しずつ共感が得られるのではないかと思います。


信頼を得るために、Face to Faceで話を

-xCAREは2023年1月で設立1年目を迎えられましたが、事業立ち上げ初期に感じた課題はどのようなものだったのでしょうか

福永:立ち上げ当初に感じた課題は“信頼”でした。医療業界は信頼が非常に重要な世界で、立ちあげたばかりの会社は信頼がなく、「一緒にビジネスをしましょう」と言っても、最初のころは苦労しました。

-信頼を得るために、具体的にどのように取り組まれたのでしょうか

福永:自分たちについてよく知ってもらうために、大手製薬メーカーで役員も務めた経験豊富な共同創業者である棚瀬と2人で、「このような事業で、このような点でお手伝いできます」ということを説明して回りました。オンラインがメインの時代だからこそ、オンラインだけではなく各地へ足を運び、対面で話をしました。信頼を得るには、Face to Faceが重要だと思い、立ち上げ初期は各地を飛び回っていました。


情報が集まる神戸医療産業都市に進出

-昨年、神戸医療産業都市にxCARE神戸支社を開設されましたが、どのような点を魅力に感じ神戸に進出されたのでしょうか

福永:神戸医療産業都市では、神戸医療産業都市推進機構のコーディネーターと企業が情報交換を密に行っており、また、海外企業の誘致にも積極的です。神戸支社を開設することで自然とそのような情報が集まる点に魅力を感じました。当社のメインフォーカスである「ベンチャー企業の事業化支援と海外企業の事業化支援」とも一致していますし、コーディネーターの方々も素晴らしい方が多いですしね。

-今後、神戸医療産業都市で取り組みたいことを教えてください

福永:日本で事業化を目指す海外スタートアップの支援を神戸で取り組みたいです。海外スタートアップにとって、日本の市場は非常に魅力的だとは思うのですが、独特な文化や規制があり参入しづらいため、そこを支援することでドラッグ・ラグの解消にもつながるかと思います。神戸医療産業都市には海外スタートアップ支援のノウハウがあると思うため、行政と協力して取り組みたいです。
また、リソースに困っている企業に対して、エキスパートを紹介し、日本発の良いシーズを1つでも多く患者さんのもとに届けられるよう神戸医療産業都市と深く大きく連携していきたいです。


”スタートアップの事業化支援”と”エキスパートの働き方”に新たな価値を

-医療業界に特化したエキスパートプラットフォーム「MEDISPURT」をリリースして以降、150名を超えるエキスパートが所属するプラットフォームへと進化していますが、どのような目的で本プラットフォームを作ったのでしょうか

福永:リソースに困る医療分野のスタートアップに対して、医療業界のエキスパートを集め、エキスパートがフレキシブルにスタートアップを支援できる仕組みを目指し「MEDISPURT」を作りました。登録しているエキスパートは、副業人材や定年退職後のシニア人材で、特定の分野で人材が不足しているスタートアップや新規事業を立ち上げようとしている企業等がユーザーです。

-今後xCAREとしてどのような価値を提供したいと考えていますか

福永:日本にはいいシーズがたくさんあるにも関わらず、実際に患者さんが使える薬や医療機器になるものは多くはありません。医療業界で新しいことを始めたいという企業に、本プラットフォーム使って最適なエキスパートチームを提案することで、良いシーズを確実に患者さんのもとに届くようにしたいということが提供したい1つ目の価値です。
2つ目は、エキスパートの働き方や価値の可能性を広げたいと考えています。これまでは、1つの会社でずっと働くという価値観がありましたが、多様化する現代では、副業や定年退職後も働きたいという方がたくさんいます。スキルや経験が豊富であるが活かしきれていない人がたくさんいるため、そのような人が第2の選択肢を持てるようにしたいと考えています。「MEDISPURT」は自分の会社以外のところで成長したい、違った世界で自己研鑽をし、成長した後に所属先の会社に還元したいという副業人材や、定年退職後のシニア人材がスキルや経験を活かしてスタートアップを支援することにフォーカスを当てています。

今後も“スタートアップの事業化支援”と“エキスパートの働き方”の2つについて、新たな価値を生み出したいと考えています。

株式会社xCARE:https://www.xcare-medical.com/
MEDISPURT:https://medispurt.com/expert#feature