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【SDGs CHALLENGE】市民1人1人が社会の一員であるという実感を持つために。Liquitousが目指す新しい民主主義の仕組み

<インタビューイー略歴>
株式会社Liquitous
代表取締役CEO 栗本 拓幸 氏


<略歴>
1999年生まれ。市民の社会参加/政治参加にかかる一般社団法人やNPO法人の理事、地方議員コンサルタントなどとして活動。現場の声や自らの経験をもとに、デジタル空間上に、市民と行政をつなぐ「新しい回路」の必要性を確信し、2020年2月にLiquitousを設立。

2021年より、世界規模のSDGs課題解決に挑むスタートアップの事業開発・海外展開を支援し、兵庫県・神戸市からグローバルな社会変革を生み出すシステム・プロダクトを創造することを目指し、グローバルなSDGs課題解決を目指す共創プログラム「SDGs CHALLENGE」が誕生しました。本プログラムに採択されたスタートアップを紹介していきます。

<サービス紹介>

Liqlid」は、Liquitousが独自に開発した、『じっくり話して、しっかり決める』がコンセプトの、対話・熟議に基づく参加型合意形成プラットフォームです。市民と行政をつなぎ、市民発のアイデア出しからプロジェクトの共創、意向調査まで一気通貫で実施できます。神奈川県鎌倉市や千葉県木更津市など全国の自治体で、計画・構想策定や行政ニーズ把握の仕組みや、スマートシティの基盤として「Liqlid」を活用いただいています。

市民と行政の架け橋となる仕組みをつくりたい

起業するまでの経緯ときっかけを教えてください。

栗本氏(以下、栗本):ちょうど18歳になった時、様々な国会議員や地方議会議員の皆さんの選挙や政策に関わるお手伝いをはじめたのがきっかけです。そこで関わった多くの方が「市民の声は大事だ」「市民の声を聞かなければいけない」とおっしゃっていましたが、制度の問題として、これだけデジタルツールが普及している現在においても、市民と行政の間にデジタル上の架け橋がないという現状には非常に思うところがありました。特に私たちが日常生活を送るまちや地域の中で、自分たちの声を行政に届ける手段がないと感じ、声を届けるだけではなくてその中で行政と市民が一緒に対話をしていく仕組みをつくりたいと思い、今から約3年前に会社として立ち上げました。

-どうして政治や行政の取り組みに関わるようになったのですか?

栗本:中学生の時に生徒会に入ったことが原点です。中高一貫校で中学生から高校生の間、生徒会の活動に携わり、全国の生徒会役員の有志を集めて学校の課題や地域課題をディスカッションするイベントを実施したり、学校内で解決できない全国的な課題があれば、文部科学省や校長会に提言したりしていました。また、私が高校1年生の時に18歳選挙権が実現したのですが、当時生徒会での活動の延長でその動きに関わっていたこともあり非常に近いところから見ていて、自分たちでも新しい法律や制度を作ることができるということを、実体験として知るきっかけとなりました。政治や行政の取り組みに興味関心があったというよりも、そこにちゃんと主体的に参加できるんだという感覚を持つようになったので、その延長線上でもっとより良い制度や仕組みを作るために私も直接参加したいという思いで、18歳の頃からいろいろと政治や行政に関わるものに取り組むようになりました。

政治や行政にもっと参加しやすくなれば、人々の意識も今とは大きく変わりそうですね。

栗本:それを目指しています。「一人一人の影響力を発揮できる社会をつくる」が弊社のミッションなのですが、何をしたいかというと、自分自身が国や社会を変えられると思う自己効力感を持ってこの社会の中に生まれて、なおかつそのまま生活を送っていけるような社会を作りたいんです。18歳で自己効力感を持っている人の割合が18.3%であるという日本財団の調査もありますけれど、日本人は世代を問わず自己効力感はすごく低いので、自由に政治や行政に参画するのは難しいと思うんです。そこで、政治や行政に参画しやすくなるような仕組みを作ることで、より多くの人が自己効力感を得られるような経験ができればと考えています。

 

 


すべての人が主体性を持って生きられる社会へ

SDGsチャレンジにご参加を決めた理由を教えてください。

栗本:私たちの事業は、国内ではまだまだ類似のサービスも少なく、今後どういう形で事業として展開させていくのかを試行錯誤していかなければいけないと考えていたときに、社会的企業に対して精通されている皆さんがサポーターとしていらっしゃるSDGsチャレンジの存在を知ったのがきっかけです。同時に海外には類似のスタートアップが多くあるので、海外での市場調査の支援があるのが、今後の我々の事業展開にとって非常に重要であると考え、参加を決めました。

市民の社会参加はSDGsとも関係が深いですよね。

栗本:私たちの取り組みは、SDGsのゴールでいうと16「平和と公正を全ての人に」、ターゲットというと16.7「参加型包摂的な意思決定を全ての階層で実現する」に該当すると思います。ゴール16は平和という言葉から戦争の問題と捉えられることが多く、特に日本に住む立場からすれば関係ないと思われがちなのですけれど、まさにこれからのSDGsの推進にあたっては、どのゴールとも関連付けて確実に取り組まなければいけないのがゴール16であると私たちは考えています。ゴール16に取り組むことの重要さをうまくプロモーションしたいという思いずっと持っていて、その時にまさにSDGsに適うような事業を支援するというSDGsチャレンジの取り組みを拝見し、そのメッセージに共感したこともSDGsチャレンジへ参加を決めた大きな理由の一つです。

今後社会に対してどのような価値を提供していきたいと考えていますか。

栗本:社会に生きている一人一人が無力じゃないという感覚を持つことができるような仕組みを作りたいと思っています。私たちの取り組みは人が生きていく上で必須のものかというと、おそらく必須ではない、どちらかというとプラスアルファのものだとは思います。ただ同時に、人々が環境的にも社会的にも精神的にもよりよい状態で生きていくためには、公的な様々なサポートが必要だし、公共的なものへのアクセスが不可欠です。市民が行政に参加し、行政にちゃんと市民のニーズが届いて、更に市民のニーズを深堀していくというプロセスは欠かせないと思っています。すべての市民が行政に主体的に参加できる新たな仕組みにより、それぞれの市民のニーズや想いが実現され形になっていくことで、自分たちはちゃんと社会に対して働きかける存在なんだ、単なるサービスの受益者ではなくて自分たちもちゃんと主体性をもって社会の中で生きているんだっていう実感を得ることが私たちの提供できる価値だと考えています。